「隣人との幸せ」を体現してきた地域の信用金庫・ひがしんの粋でいなせな取り組み

2021.10.25

墨田区で暮らす人なら一度はその名を耳にしたことがあるといっても過言ではない東京東信用金庫。


「ひがしん」の愛称で親しまれ、街なかを自転車の営業さんが走り回りながらお客様を訪ねていく様子は、街の日常風景となっています。


東京東信用金庫のすごさは、金銭面でのサポートを越えた、地域との深い関わりを古くから築きあげてきたこと。その姿は「隣人との幸せ」をずっと昔から体現しています。


実は今回、すみだ向島EXPO2021にご協賛いただき、100枚分のチケットを応援購入いただいた他、職員の方々が日替わりで現地スタッフとしてお手伝いしてくださるなど、多大なサポートをしていただきました。


道行く街の人々に声をかけ、EXPOの説明をしてくださる姿には、どの職員さんからも「街に貢献したい」という姿勢が伝わってきます。


そんな風に「地域の信用金庫」として力を尽くしてこられた組織の裏側には、どんな想いがあるのでしょう?


 実行委員会メンバーが、東京東信用金庫の中田清史理事長にお話を伺ってきました。


信頼のもとに成り立つ、家族のような関係性


理事長:ひがしんの経営理念は「縁 あたたかく―人へ・街へ」です。私たちは縁があって、この地域で信用金庫をやらせて頂いているのだから、つながりを大事にする必要があると思っています。この地域で働く人、住んでいる人、それから企業の方のご支援をすることが、我々の存在価値。全職員で話をしながら「とにかくお役に立てるように仕事しましょうよ」という共通意識のもと活動しています。


後藤(すみだ向島EXPO実行委員長):実は前に街の人から、ひがしんさんの昔の姿を噂話的に聞いたことがあって、いつかお尋ねしたかったんです。


理事長:お、どんな噂ですか?


後藤:下町の信用金庫らしいエピソードだなと思ったのですが、商店街のお店の軒下でザルに入れてあるお金を、ひがしんさんが集金に来たら店主が金額を数えないまま「はい」と丸ごと預けて、そのザルをぶら下げてひがしんさんが街なかを駆け回っていた、とか。



理事長:ああ、そういうことは昔あったかもしれないですね。例えば商店街の売り上げを毎回数えていられないお客様もいるわけじゃないですか。だから確かに、かつてはそのまま預かって「あるだけやって数えて入金しときますから」って。もちろん今はそんなことないけどね(笑)。


後藤:そのことだったんですね! でも、これってすごい信頼関係ですよね。信用金庫とお客さんの間柄というよりも、日常を共にしている、いわば家族のような。


理事長:お客様との家族のような関わり合いは、今でも大事にしています。私も営業をやっていた頃なんかは、訪ねていった先で朝ご飯を食べさせてもらったりしていましたよ。「どうせ食べてないんでしょ。あまりもんだけど食べていきな!」みたいに。


後藤:ひがしんさんの姿勢は、今もそんな時代の何かを引き継いでいる感じがありますよね。


理事長:そうかもしれません。信頼してもらって、代わりに数えて入金するような関係性は自然とあったんですよね。神社のお賽銭だって、正月は特にきちんと数えるのはひと苦労じゃないですか。


後藤:あれもひがしんさんに持ち込まれるんですか。


理事長:お賽銭って、入金する前に洗わないといけないんですよ。結構大変なんです。


後藤:そんなことまでやっているんですね……!


「地域に根ざした信用金庫」としてやってきたこと


後藤:ひがしんさんはSDGsの取り組みも積極的に行っていますよね。


理事長:はい。我々が長くやってきた活動が、SDGsのどの項目に当てはまるかイメージできるようになったことで、「誰一人残さない」という考え方は間違っていなかったんだと思えました。



理事長:ひがしんではお客様に向けて4つの会を組織しています。事業者の会、若手経営者の会、女性の会、年金の会など、地域の人たちがどれかしらの会に入れる状態にすることで、交流ができるようにしているんです。


その他、マッチングの機会を作るためにビジネスフェアを10年以上開催していたりもします。一万人近い方にご来場いただき、何百もの参加団体とつながる場を作ってきました。去年はリアル開催はできなかったので、今年の3月にオンライン開催をして。


後藤:きっとコロナ禍で、そんな風に対応を余儀なくされたこともたくさんあったんでしょうね。


理事長:そうですね。これまでは直接お客様と関わることを大事にしてきたからこそ、代わりにどうやってつながり、ご支援できるかを考えざるを得ませんでした。


例えば、錦糸町の新日本フィルハーモニー交響楽団で毎年新入生歓迎会も兼ねたコンサートをしてもらっていたのですが、それもコロナ禍で中止に。そこで、開催していたらかかっていたであろう金額を楽団に寄付したり。


その他、飲食業の方々のお力に少しでもなれればと、墨田区商店街連合会にキッチンカーを寄贈し、お弁当として販売できるように支援させてもらったりもしました。



後藤:ひがしんさんのこうした取り組みって、きっと会議室で戦略的な話し合いをして生まれたものじゃないですよね。お客さんの声を日頃から聞ける関係性だからこそ、必要だと感じたことを一つひとつ具体化して動いているんだなと感じます。


理事長:ひがしんは地域が限定されているので、よりお客様に近い距離で関わることができますからね。お祭りにも参加して、神輿を担いで、一緒になってずっとやってきました。


また、この辺は水害の心配もあるので、万が一の時にひがしんのビルを避難場所として活用していただけるように墨田区と提携していたりもします。災害時の非常食品も各支店に備蓄していて、期限が一年を切ったものを福祉施設に寄贈したり、3.11の時は、帰宅困難者の方のために支店の会議室を開放しました。


その他、地域の美化活動ということで駅前の清掃をしたり、振り込め詐欺や特殊詐欺の未然防止のために、お年寄りを対象としたロールプレーイング大会を行ったり。


と、まぁこんな風に、時と場合によって必要だと思ったことを実施しています。


後藤:これは聞かないと分からないですね……。特に若い世代は金融機関との付き合いってほとんどないし、お金を預けてただ引き出す場所としか見ていないかもしれないけど、実はこんなにも街の生活を支えてくれて、困った時の助けになってくれているなんて。


ひがしんさんの口座を持っているとかいないとかじゃなく、知るとすごく勉強になると思いました。仕事ってこういう風にやりがいがあるんだと勇気づけられるし、そんな仕事が地域に広がっていることを、この街で暮らす若い世代も知る意味がありますね。


理事長:信用金庫としての仕事以外にも、地域に対してすべきことってあると思うんですよ。そこから信頼関係が生まれてこそ、相談を受けやすい関係性になるものでしょう?


支店の営業担当はお客様の生年月日を分かっているから、その都度お祝いのメッセージも送りますし。そういった人と人とのお付き合いを大事にしたいですよね。


スカイツリー完成後の変化と、これからの下町について


理事長:墨田区はやっぱり、スカイツリーができる前と後では全然違いますよね。スカイツリーの完成を境に若い世代も越してきて人口が増え、新しくマンションも建って、23区内で唯一なかった大学も2つできました。


コロナ禍でのオンライン授業が徐々に解除されたら、街に学生が増えて、また違った雰囲気になるんじゃないかな。


それにコロナ以前はインバウンドの方もすごく多くて、この辺にもシェアハウスがたくさんあったので、また元のように戻れば活気が出てくると思っています。


後藤:墨田区が発展していくなかで、すみだ向島EXPOのような、下町の文化を残す動きについてはどんな風に感じられていますか?


理事長:協力したいと思っていますよ。皆さんのような人たちが活動されて、色んな意味で街を活性化してくれるのはすごくいいことだと思います。古いものをただ新しくするだけじゃなくて、活かして、住民の人たちと協力していくのはも大事です。だって、そうしないとマンションだらけになってしまいますもんね。


マンションが悪いわけではないけれど、すみだ向島EXPOの会場となっているような下町は、残していく意味があると思います。古いものの文化を失くさないための助成金や支援に関することは、積極的に対応させていただきますし。



後藤:ありがとうございます。僕らの街に残る長屋のような古い建物って、一階が開けていて2階が居住空間になっているから、住みながら何か始めようとする人にとっては力になりやすいと思うんです。


ビルばかりでは、ある程度事業として成功した人たちにしか手が届かないけれど、イチから何か始めたい人にとってこの街が居心地の良い場所になるといいなと。


それに、手探りでビジネスを初めた期間に、ひがしんさんに相談をして、一人じゃ進まなかったものを形にしやすかったりもするはずで。


だから下町の建物を活かせば、この街がこれからのスタートアップのモデルになりえるのかなとも考えているんです。


理事長:一緒にやっていきましょうよ。すみだ向島EXPOの全体テーマに「隣人の幸せ」ってあったじゃないですか。隣人って、やっぱりひがしんにとってはお客様なんです。だから、お客様である街の人たちが幸せでいられるお手伝いができればいいなと思っています。



理事長:それから今年のテーマである「粋でいなせ」って何だろう、と。


江戸時代みたいに、貧しくても助け合ってお節介をして、その中で幸せを感じるところが「粋」と「いなせ」なんじゃないですかね。


我々ひがしんにとっては、できそうもないようなことも諦めないで、お節介なくらいお客様に「こうしたほうがいいんじゃないですか」と提案をすることですよね。


提案がなければ解決もないでしょうから。そんな、地域に根ざした信用金庫であり続けたいです。


後藤:今回ひがしんさんの取り組みや想いについてこうして伺えたこと、すごく意味があると感じました。これからの街を考えていくときに、僕らがすべきことを、ひがしんさんにならって考えていきたいと思います。今日はありがとうございました。