© 2020 SumidaMukojimaEXPO
語り継がれる、まちとアートの融合したイベント向島博覧会から20年――
今も「お隣さん」づきあいが生きる東京すみだ向島エリアは、きびしい戦禍をくぐりぬけ、“長屋文化” とともに独自の進化を遂げ続けてきました。そして現在、コロナ禍をうけ、人と空間と時間の関係が問われる現状だからこそ体験型芸術祭「すみだ向島 EXPO 2020」を開催します。
本EXPOのテーマとした「隣人と幸せな日」とは、わたしたちが限定されない世界で暮らしていくその先にある、現代版「醤油の貸し借り」であり、「火事場の運命共同体」となる関係性への、希望です。その先へと紡ぐ、新たなコミュニケーションについて――。
アートや実験的な現場を通した問いを、ぜひ体感してください。
Mukojima in Tokyo's Sumida ward is an authentic village-like neighborhood right under the shadow of the Tokyo Skytree. Having survived the destruction of the air raids in 1945, the neighborhood is a rich pocket of history and culture in the midst of modern Tokyo. Mukojima's warm local community preserves the spirit of a bygone era. The Sumida Mukojima EXPO 2020 will take place in this unique setting, showcasing the neighborhood's distinctive “Nagaya culture” of old wooden rowhouses. The Expo harnesses art to connect you with the locals, letting you immerse yourself into the neighborhood for a one-of-a-kind Tokyo experience.
主催 | すみだ向島 EXPO 2020 実行委員会 |
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代表 | 後藤 大輝 |
芸術監督 | 北川 貴好 |
アドバイザー | 長谷川 逸子 |
会期 | 2020.9.12(土)〜10.11(日)※ 水曜日休み |
時間 | 10:00〜18:00 ※ 最終受付16:00 / ユートリヤドームのみ18:00〜20:00 |
開催場所 | 東京都墨田区曳舟エリアの街中会場約40箇所 (すみだ生涯学習センター・ユートリヤ、七軒長屋、小倉屋、約20軒の長屋やアートスペース、約18軒の軒下空間) |
助成 | 公益財団法人東京都歴史文化財団 アーツカウンシル東京、公益財団法人花王芸術・科学財団 |
後援 | 墨田区、NPO法人 向島学会 |
協賛 | 深井 輝久、株式会社エイゼン、暇と梅爺株式会社 |
協力 | NPO建築とアートの道場、京島長屋文化連絡会、すみだノート |
日時指定パスポートチケット | ○ 前売 2,500円(限定50枚) ○ 大人 3,300円 ○ 大学生・専門学生 2,000円 ○ 高校生以下・障がい者 1,000円(税込) ※ 3歳以下は無料 ※ 飲食特典付き ※ 無料エリアあり |
「宣言文」
コロナ禍以降、「関係する」という人間の欲動が揺れるなか、わたしたちは地域文化を土台にすえ、芸術をもちいて今までとは違うプロセスを考え、表現する機会として「すみだ向島EXPO」の、2020年の開催を宣言します。
わたしたちは具体的には、二つの軸から「関係する」ということについて取り組みます。
まずは最小単位となる人と人(個人)との関係性です。対個人的な関係性は、身近なほど警戒を解いて接することができますから、アーティストの考えをより強く反映した表現となるでしょう。
つぎに、人と共同体(コミュニティ)との関係性について取り組みます。家族、友達、馴染みの店、町内会、祭りや趣味など。人は複数の多様な共同体に属しています。多様なコミュニティのなかで、警戒という人間本来が持つ儀礼を乗り越え、いかに新しい人を受け入れるかという問いがここにはあります。
そこで今回わたしたちは「すみだ向島」という地域を土台にいたしました。密集密接、長屋暮らしの多くひろがるこの地域には、歴史的にも、人を警戒し、調査し、認めて、安心できる関係になるまでの作法や知恵が、豊富に詰まっています。わたしたちはこの地域に、コロナ禍後の新しい共同体や関わりあいの可能性を感じてやみません。
すみだ向島にはいま、表現の土台になりえる複雑な価値情報があります。しかし他方、都市開発や経済循環の渦にのまれ、地域文化という価値情報が溺死寸前であることも事実です。個人情報データベースに基づくデータ化の波に乗らず、失われゆく複雑な人の営みが、この地域にはある――その感覚の翻訳作業が、いまこの時点の急務でもあるのです。
本EXPOの発端は昨年、「隣人と、幸せな日」というテーマの策定にありました。上述のような、すみだ向島という地域性を起点として、新しい隣人の視点のあり方や形態を探り、本EXPOに訪れる人もまた隣人になれるようなきっかけを興そうというものです。
しかしいま、世界は急速に閉じはじめています。
コロナ禍の直面により「会ってはならない」という制約を受けるなか、すみだ向島EXPOでは、地域との関係/距離にあらためて取り組み、物理的な制限を超える問いに向かいます。
未曽有の事態におかれた今日だからこそ、それ以前に策定した「隣人と、幸せな日」というテーマについての熟考を更新し、EXPOを展開していこうと考えています。
これから人同士はどのように相互信頼を築くのでしょうか。分断された共同体を行き来しながら、連帯し継続するネットワークは、どのように可能なのでしょうか。
わたしたちは現在的な「関係」を問うEXPOを興します。あなたが、刷新していく世界のなかで、さらなる隣人になってくれることを期待しながら。
すみだ向島EXPO実行委員会 後藤大輝
新しい生活様式としての隣人と幸せな日
北川貴好
新しい生活様式というキーワードをコロナ禍においてよく耳にする。そして、その新しい生活様式の指標になるものとして、内閣府が本年初頭に掲げた「ムーンショット型研究開発制度」のサイト(*https://www8.cao.go.jp/cstp/moonshot/)を挙げていきたい。一瞬、ジョークサイトかと思ったほどの未来目標がそこには掲げ上げられていた。
「2030年までに1つのタスクに対して、1人で10体以上のアバターを運用できる基盤をつくる。2050年までに、人が身体、脳、空間、時間の制約から解放された社会を実現する」
外出禁止という極度に「空間と時間、身体の制約」がなされた現状のなかでリモートワークが発達し、空間時間から解放された社会への一歩が進んでいる。皮肉ではあるが、この状況だからこそ、新しい生活様式の幕があがったのかもしれない。怖いような便利になって良いことなのだろうか不安を抱えながら、我々は世界的大不況を迎えるらしい。
ここ20年ほどのメールやインターネットの発達で、情報摂取が便利になり、移動やコミュニケーションも容易になった。私の活動ベースと言い切れる、コミュニケーションを軸にプロジェクトを動かすアートプロジェクトという形式が発達したのもネットのおかげだ。
時代の様式とリンクするようにアートプロジェクトの形式は変化し、私の住む向島でもさまざまなプロジェクトが展開された。さらに今年2020年はコンテンポラリーアートを扱うオルタナティブスペースやギャラリーは10ヶ所以上に増えている。そして、現代美術以外のクリエイティブな人が運営するスペースもかなりの数があり、自然に増加していく流れがある。観客としてアートスペースなど向島を訪れたものは、自由にリノベーションされた空間や職住一体のこの街で、自らもプレーヤーとして参加できるような感覚を抱いて帰っていく。こうして、新しい「隣人」になる多くのアーティストやクリエーターが増えた。
そんななか今回行うすみだ向島EXPOでは、観客は単に訪れる観客としてではなく、土地に住まずとも「隣人」やプレーヤー、リアルな空間でのアバターとなり、人と街の関係を担うだろうと思っている。
ムーンショット計画が進むのなら、人間がなにかの制約から解放されるとあるが、実はアートプロジェクトにおいてすでに、その瞬間は訪れているのかもしれない。想像のなかでは、街のなかにアバターとしていろんなアーティストが存在しているような気がするからだ。
ところで、先ほどからの「隣人」というのは、下町のような長屋であれば壁を共有することで、音が聞こえたり無意識のなかで他人という存在を認識しあう関係だ。隣人を意識することから街を意識し、地域のあり方を意識する――向島のような地域では、そうした地続きの関係が育まれている。
想像力を広げてみよう。「隣人」の定義を、隣国の人やはては宇宙人にまで広げてみる。交信さえ可能ならば、お互いを認識/意識し、空間を飛び越えた地続きをイメージできると私は思う。
墨田区にあるユートリヤドームで「巨人と市民」というプロジェクトを進めた際、ドームに宇宙人の巨人を投影することで互いの交信を試みるようなことをした。結果、向島のドームに宇宙人という異世界の「隣人」を迎え入れるイメージの下地が育まれたことと思う。
人は想像力を用いることで、なにかしらの制約から解放されるのだ。何も自分のことだけでなくその先にいる「隣人」を意識することで、街やそこに住む「他人」(つまり自分を見ている隣人)との繋がりを身体、脳、空間、時間の制約から解放させられると思う。
今後、コロナ禍を境に新しい生活が始まるだろう。想像力を間違えた方向に向け、隣国との問題がさらに根強くなる可能性があるのかもしれない。街のコミュニケーションにおいても、同様だろう。
そんな現状だからこそ、エキスポに訪れる観客に対して、「隣人」という視点による関わりを設定し、継続して創造的な空間に関われる基盤を創りたい。これが、今回の目標である。
従来ならば一軒の家にかかわる「隣人」は物理的に4、5人くらいがせいぜいだが、2030年ごろには関わりのある「隣人」(アバター)として10人以上がその場所に現れる、というような家や地域が生まれるならおもしろい。たとえば2050年、想像力を用いることで、他人任せでなく自らと「隣人」が地続きになる街、多層的で想像力に富む街を創ることができるのだ。ムーンショット計画が皮肉ならざる未来。そんな想像が、私にとって幸せである。
すみだの地、アーティスト/クリエーターと共に、このコロナ禍の状況で、新しい生活様式やこの地域を考える。考えたことを表現し、提案することが、私にとってのすみだ向島EXPO2020なのである。
すみだ向島エキスポがこの夏から秋に延期になりました。今、私たちはコロナウイルス が、在宅ワークをやったり、学校が休校になったりと、様々な体験をしました。次の秋のイベントには、これらの体験を通して、これから考えていかなければならない新しい社会、環境、あるいは生活などについて、アーティストの皆様に考えていただき、新しい作品に盛り込んで欲しいと思っています。
私自身は子供ワークショップを主催して、子供達と一緒に新しい生活や環境について考えていきたいと思っています。
今は10代の人たちが、環境の悪さ、気象の変化、地球のことを考えて社会にメッセージをしています。たぶん、子供達もいろんなことを考えたんじゃないかなと思います。ワークショップでは「私の家」を作ってもらおうと思いますが、たぶん、次の時代にどう生きたらいいかを一緒に考える機会にもなるだろうと思っています。
3.11のあとに、塩釜で子供ワークショップをやったんですね。家が壊されたりして傷ついた子が午前中はもうただただ泣いていたんです。でも、みんなが一生懸命やっているのを見ていると、だんだん元気になってきて、夕方にはすごく素晴らしいドローイングを残してくれたという経験があります。やっぱりみんなでなにかしたり一緒に考えることで元気が出たのだと思います。子供達もやっぱりこれからのことを一生懸命考えているんだと、その姿に感銘を受けました。だから、私は、このコロナの後、ワークショップをしたいなあとずっと思っていました。
ぜひ皆さんにもワークショップに参加していただいて、こどもたちを元気付け、未来の子供や未来の大人に対して、わたしたちはどんなことを提案していったらいいか一緒に考えたいと思っています。ご協力をお願いします。
みんなと一緒に考えるためにミーティングが開かれるようですね。積極的な意見が出るといいなあと期待をしております。では、そのときまたお会いしましょう。よろしくお願いします。