アーティスト

江戸の洋琴

ヤマハ株式会社デザイン研究所@三軒長屋旧邸1F

ヤマハは音・音楽の会社であり、文化の会社です。江戸で進化した架空の洋琴(ピアノ)をアート作品として制作しました。作品を通じて、文化のサスティナビリティの魅力と重要性について表現します。ご来場頂いた皆さまに共感していただけますと嬉しいです。
______


もしも江戸が文明開化しないまま(西洋化しないまま)現代化する世界線があったなら、日本らしい生活用式の中でピアノの姿はどのように進化していたでしょうか?ヤマハ株式会社と千葉大学デザイン学科との協同研究で江戸の下町地区の長屋生活について観察し、架空の進化を遂げた江戸情緒溢れるトイピアノをデザインしました。深川江戸資料館や江戸東京博物館での視察・ヒアリングの他、京島地区の長屋で学生の合宿を行いインスピレーションを受け取りました。そんな産学協同研究活動を通して見えてきたのは、物質的に乏しい中で工夫と知恵を凝らす事を自体を楽しむ、江戸の庶民の精神的な豊かさでした。京島地区は古きと新しきが現代に共存する貴重な町。この町で生まれた作品を、この町で愉しんで頂きたいと思います。

______

6つのトイピアノ(3点はこの期間で発表する新作です)作品についてそれぞれご紹介します。

岡持洋琴:大きな持ち手が特徴のトイピアノです。
オリジナルのグランドピアノの重量は250kg~500kg近くあります。ヤマハはピアノのアコースティックの機構を電子基盤に置き換える事で小型化・軽量化を図り「ポータブルピアノ」として進化させてきました。しかし、この作品の様に「大きな持ち手」の付けるというのも、「ポータブルピアノ」のもう一つの正解の姿だったかもしれません。


音籠:
江戸の下町では風流な虫篭に鈴虫を入れて、その音を愉しむ風習がありました。虫の音を美しく感じるというのは日本独特の情緒だそうです。鍵盤を押した時にアコースティックの機構が跳ね上がる様子を虫に見立て、音と動きを同時に楽しむ小さなピアノを作品にしました。

影絵洋琴:
障子と一体になったトイピアノです。親子でピアノを挟むように、音楽に合わせて影絵を踊らせれば、演奏はより一層楽しい時間になるのではないでしょうか。

隙き間:
狭いながらも解放感のある下町の長屋街では、空間を上手に切り替えるための道具として間仕切りが重宝されていました。仕切りとして自分だけのスペースをつくりながら、あるいは縦に並んだ音板の隙間を通して向こう側の気配や周りの空間を感じながら演奏すれば、その音色もまた違ったものに感じられてくるのではないでしょうか

弾き箪笥:
桐ダンスの元祖は、下町で火事が起きた際、狭い路地でも大切なものをまとめて持ち出せるように生み出されたと言われています。音楽は生命維持のための必需品ではありませんが、心の健康を保つために、同じ位大切なのではないでしょうか。「祝い事に箪笥を贈る」という文化に着目し、こども用品をまとめる収納に、知育玩具としての鍵盤を収めました。

音机:
もしも江戸の町にヤマハの楽器店があったなら、音楽の楽しみ方を広めるために、同時に寺子屋で音楽教室を開いていたかもしれません。この作品の脚には、典型的な寺子屋の文机の形状を取り入れています。

サイズは、20cm角 ~ 60cm角 程度。
重量は、1kg ~ 8kg 程度
6作品

展示品について、現時点では、ホームページでの紹介は既存の3作品。
今回のEXPOのために新作を3点追加予定です HPでの公開日は未定。

ヤマハ株式会社デザイン研究所は、楽器をはじめとする製品デザインの傍ら、研究活動として幅広く新たな価値創造と提案を行っております。作品は仮説、展示は提案、来場の皆さまの
2021年より千葉大学墨田キャンパス内に事務所を構え、産学協同研究を行っています。
ヤマハデザイン研究所の展示履歴
2023年 イタリア ミラノデザインウィーク 「YouAreHere」
2022年 web 展示 Stepping Out Of The Slate
2019年 イタリア ミラノデザインウィーク 「pulse」
2018年 ヤマハ発動機との合同個展 「Tracks」 
等々多数